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幼児期(3〜6歳)に身につけたい基本の動き。「上手に」より「たくさんの種類を」

幼児向けのサッカー教室の体験で、保護者から「もうドリブルは教えてもらえますか」と聞かれることがあります。教えられないわけではありません。ただ、4歳の子にいちばん要るものは、ドリブルではない。そう答えると、たいてい驚かれます。

  • 対象指導者・保護者
  • 読む目安約7分
  • 区分読みもの・子どもの発達・教育

公開 2026.10.29 / plax labo 編集部

目次

文部科学省が2012年に出した「幼児期運動指針」は、3〜6歳の子どもに、毎日合計60分以上、多様な動きを楽しく経験することをすすめています。「多様な」が、この指針の中心です。1つの競技の技術を早く覚えることより、動きの種類をたくさん持つこと。それが小学生以降の「運動ができる」につながります。この記事では、その理由と、年齢ごとの目安、教室と家庭での組み方を書きます。

point
  • 幼児期に競技の技術より「動きの種類」を優先する理由
  • 3歳・4歳・5〜6歳で、できるようになる動きの目安
  • 教室の30分と、家庭の10分の組み方

なぜ「種類」なのか

幼児期の体は、神経のつながりが急速に育つ時期です。このとき経験した動きは、体の「引き出し」に入ります。小学生になって新しい動きを覚えるとき、脳は引き出しの中から似た動きを探して、組み合わせます。引き出しが多い子は、初めての動きをすぐに覚える。少ない子は、ゼロから作ることになる。

ドリブルを4歳で教えると、ドリブルの引き出しは1つ増えます。でも同じ時間で、走る・止まる・方向を変える・ボールを足で触る・転がる・ジャンプする、を遊びで経験した子は、引き出しが6つ増えます。そして、その6つを持っている子は、7歳でドリブルを教えたとき、たいてい早く覚えます。

研究者がまとめた「36の基本動作」は、3つのグループに分かれます。

  • 体のバランス:立つ・座る・回る・転がる・ぶら下がる・逆さになる・渡る・起きる…
  • 体を移動する:歩く・走る・跳ぶ・はねる・くぐる・のぼる・よける・すべる…
  • ものを操作する:持つ・運ぶ・投げる・捕る・蹴る・つく・転がす・引く・押す…

幼児期の目標は、この3つのグループをまんべんなく経験することです。競技の技術は、どれも、この基本の動きの組み合わせでできています。

年齢ごとの目安

ボール

目安であって、個人差は大きいです。「できていない」の判断には使わず、「次に何を遊びに入れるか」の参考に。

3歳ごろ

  • 走る(まだ、ぎこちなく、急に止まれない)
  • 両足で跳ぶ(その場で)
  • ボールを両手で投げる、転がす
  • 低いところからの飛び降り
  • 大きなボールを、体で受け止める

4歳ごろ

  • 片足で数秒立つ、片足で跳ぶ(ケンケン)
  • 走りながら止まる、方向を変える
  • ボールを片手で投げる(まだ上から投げるのは苦手)
  • 転がったボールを捕る
  • 鉄棒にぶら下がる、前回りの手前(おなかをつける)

5〜6歳ごろ

  • スキップ(左右の違う動きを組み合わせる)
  • 走りながらボールを蹴る
  • 投げられたボールを手で捕る
  • 跳び箱にまたがる、小さい段を跳ぶ
  • 鉄棒の前回り、長く続く片足立ち

スキップは、幼児期の動きの中でいちばん難しいもののひとつです。左右で違うリズムの動きを組み合わせるからで、5〜6歳でできるようになる子が多い。3〜4歳でできないのは、ふつうです。

教室の30分の組み方

幼児の教室は、1回30〜45分が目安です。集中が続く時間が短いので(別の記事「集中が続かない子」に書きました)、5分ごとに動きを変えるのが基本です。

例として、30分。

  1. 歩く・走る・止まる(5分):音楽に合わせて歩く、鳴ったら止まる。走る・止まる・向きを変える
  2. 跳ぶ(5分):床の線を跳び越える、フープの中に跳び込む、低い段から飛び降りる
  3. 転がる・ぶら下がる(5分):マットで横に転がる、くまさん歩き、鉄棒にぶら下がる
  4. ボール(10分):転がす・捕る・投げる・蹴る。大きさの違うボールを3種類
  5. ゲーム(5分):だるまさんがころんだ、しっぽ取り。全部の動きが混ざる

ポイントは、1つの動きを「上手になるまで」やらないこと。5分やって、できてもできなくても次へ。来週また同じ動きが出てくる。半年のあいだに同じ動きが20回出てくるほうが、1日に20回やるより、幼児には残ります。

家庭での増やし方

すべり台

教室は週1回。家庭での10分のほうが、回数は多い。難しいことは要りません。

  • 公園の遊具を、全部使う。ジャングルジム(のぼる・ぶら下がる)、すべり台(すべる・のぼる)、ブランコ(バランス・押す・引く)
  • 歩き方を変えて帰る。スキップ、ケンケン、後ろ歩き、大股、小股
  • ボールを3種類。風船(追う・はじく)、大きいボール(蹴る・抱える)、小さいボール(投げる・捕る)
  • 布団の上で転がる、お父さんお母さんの背中にのぼる、ぶら下がる

家でできる遊びは、別の記事(家でできる「運動あそび」10分)に10個書きました。

faqよくある質問

うちの子は運動が苦手で、教室に行きたがりません

幼児期の「苦手」は、ほとんどが「やったことがない」です。教室の前に、公園で遊ぶ回数を増やしてみてください。走る・のぼる・ぶら下がるを、遊びの中で経験してから教室に行くと、「できる」が増えて、行きたがるようになります。

3歳から競技を始めると、有利になりますか

技術を早く覚えることはあります。ただ、幼児期に競技を1つに絞ると、動きの種類が狭くなり、小学生の後半で伸びにくくなることが報告されています。3歳で競技を始めるなら、その競技の教室の中身が「基本の動き」中心かどうかを見てください。

教室の人数が多くて、1人ずつ見られません

幼児の教室は、1人ずつ見なくてよい。全員で同時に動く形(横に広がる、2人組、輪になる)にして、コーチは全体を見る。「できたか」より「やったか」。全員がやっていれば、それでよい時期です。

summaryまとめ

  • 幼児期(3〜6歳)に要るのは、競技の技術より動きの種類。毎日合計60分、多様な動きを楽しく
  • 動きはバランス・移動・操作の3グループ。36の基本動作をまんべんなく
  • 年齢の目安は、3歳:走る・両足で跳ぶ・両手で投げる/4歳:片足・方向転換・片手で投げる/5〜6歳:スキップ・走りながら蹴る・捕る
  • 教室は5分ごとに動きを変える。競技の技術は2割まで。家庭では公園の遊具を全部使う

上手にさせる必要はありません。たくさんの種類を、楽しく。それが、小学生になったときの「できる」になります。

参考にした資料

  • 文部科学省「幼児期運動指針」(2012年)
  • 中村和彦(山梨大学)による「36の基本動作」の整理
  • 公益財団法人日本スポーツ協会「発育期のスポーツ活動ガイド」

この記事の内容は公開時点のものです。公開されている研究や公的な資料をもとに plax labo 編集部が書いています。体調・ケガ・食事に関わる個別の判断は、医師や専門家にご相談ください。

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