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文部科学省が2012年に出した「幼児期運動指針」は、3〜6歳の子どもに、毎日合計60分以上、多様な動きを楽しく経験することをすすめています。「多様な」が、この指針の中心です。1つの競技の技術を早く覚えることより、動きの種類をたくさん持つこと。それが小学生以降の「運動ができる」につながります。この記事では、その理由と、年齢ごとの目安、教室と家庭での組み方を書きます。
- 幼児期に競技の技術より「動きの種類」を優先する理由
- 3歳・4歳・5〜6歳で、できるようになる動きの目安
- 教室の30分と、家庭の10分の組み方
なぜ「種類」なのか
幼児期の体は、神経のつながりが急速に育つ時期です。このとき経験した動きは、体の「引き出し」に入ります。小学生になって新しい動きを覚えるとき、脳は引き出しの中から似た動きを探して、組み合わせます。引き出しが多い子は、初めての動きをすぐに覚える。少ない子は、ゼロから作ることになる。
ドリブルを4歳で教えると、ドリブルの引き出しは1つ増えます。でも同じ時間で、走る・止まる・方向を変える・ボールを足で触る・転がる・ジャンプする、を遊びで経験した子は、引き出しが6つ増えます。そして、その6つを持っている子は、7歳でドリブルを教えたとき、たいてい早く覚えます。
研究者がまとめた「36の基本動作」は、3つのグループに分かれます。
- 体のバランス:立つ・座る・回る・転がる・ぶら下がる・逆さになる・渡る・起きる…
- 体を移動する:歩く・走る・跳ぶ・はねる・くぐる・のぼる・よける・すべる…
- ものを操作する:持つ・運ぶ・投げる・捕る・蹴る・つく・転がす・引く・押す…
幼児期の目標は、この3つのグループをまんべんなく経験することです。競技の技術は、どれも、この基本の動きの組み合わせでできています。
年齢ごとの目安

目安であって、個人差は大きいです。「できていない」の判断には使わず、「次に何を遊びに入れるか」の参考に。
3歳ごろ
- 走る(まだ、ぎこちなく、急に止まれない)
- 両足で跳ぶ(その場で)
- ボールを両手で投げる、転がす
- 低いところからの飛び降り
- 大きなボールを、体で受け止める
4歳ごろ
- 片足で数秒立つ、片足で跳ぶ(ケンケン)
- 走りながら止まる、方向を変える
- ボールを片手で投げる(まだ上から投げるのは苦手)
- 転がったボールを捕る
- 鉄棒にぶら下がる、前回りの手前(おなかをつける)
5〜6歳ごろ
- スキップ(左右の違う動きを組み合わせる)
- 走りながらボールを蹴る
- 投げられたボールを手で捕る
- 跳び箱にまたがる、小さい段を跳ぶ
- 鉄棒の前回り、長く続く片足立ち
スキップは、幼児期の動きの中でいちばん難しいもののひとつです。左右で違うリズムの動きを組み合わせるからで、5〜6歳でできるようになる子が多い。3〜4歳でできないのは、ふつうです。
教室の30分の組み方
幼児の教室は、1回30〜45分が目安です。集中が続く時間が短いので(別の記事「集中が続かない子」に書きました)、5分ごとに動きを変えるのが基本です。
例として、30分。
- 歩く・走る・止まる(5分):音楽に合わせて歩く、鳴ったら止まる。走る・止まる・向きを変える
- 跳ぶ(5分):床の線を跳び越える、フープの中に跳び込む、低い段から飛び降りる
- 転がる・ぶら下がる(5分):マットで横に転がる、くまさん歩き、鉄棒にぶら下がる
- ボール(10分):転がす・捕る・投げる・蹴る。大きさの違うボールを3種類
- ゲーム(5分):だるまさんがころんだ、しっぽ取り。全部の動きが混ざる
ポイントは、1つの動きを「上手になるまで」やらないこと。5分やって、できてもできなくても次へ。来週また同じ動きが出てくる。半年のあいだに同じ動きが20回出てくるほうが、1日に20回やるより、幼児には残ります。
家庭での増やし方

教室は週1回。家庭での10分のほうが、回数は多い。難しいことは要りません。
- 公園の遊具を、全部使う。ジャングルジム(のぼる・ぶら下がる)、すべり台(すべる・のぼる)、ブランコ(バランス・押す・引く)
- 歩き方を変えて帰る。スキップ、ケンケン、後ろ歩き、大股、小股
- ボールを3種類。風船(追う・はじく)、大きいボール(蹴る・抱える)、小さいボール(投げる・捕る)
- 布団の上で転がる、お父さんお母さんの背中にのぼる、ぶら下がる
家でできる遊びは、別の記事(家でできる「運動あそび」10分)に10個書きました。
faqよくある質問
うちの子は運動が苦手で、教室に行きたがりません
幼児期の「苦手」は、ほとんどが「やったことがない」です。教室の前に、公園で遊ぶ回数を増やしてみてください。走る・のぼる・ぶら下がるを、遊びの中で経験してから教室に行くと、「できる」が増えて、行きたがるようになります。
3歳から競技を始めると、有利になりますか
技術を早く覚えることはあります。ただ、幼児期に競技を1つに絞ると、動きの種類が狭くなり、小学生の後半で伸びにくくなることが報告されています。3歳で競技を始めるなら、その競技の教室の中身が「基本の動き」中心かどうかを見てください。
教室の人数が多くて、1人ずつ見られません
幼児の教室は、1人ずつ見なくてよい。全員で同時に動く形(横に広がる、2人組、輪になる)にして、コーチは全体を見る。「できたか」より「やったか」。全員がやっていれば、それでよい時期です。
summaryまとめ
- 幼児期(3〜6歳)に要るのは、競技の技術より動きの種類。毎日合計60分、多様な動きを楽しく
- 動きはバランス・移動・操作の3グループ。36の基本動作をまんべんなく
- 年齢の目安は、3歳:走る・両足で跳ぶ・両手で投げる/4歳:片足・方向転換・片手で投げる/5〜6歳:スキップ・走りながら蹴る・捕る
- 教室は5分ごとに動きを変える。競技の技術は2割まで。家庭では公園の遊具を全部使う
上手にさせる必要はありません。たくさんの種類を、楽しく。それが、小学生になったときの「できる」になります。
参考にした資料
- 文部科学省「幼児期運動指針」(2012年)
- 中村和彦(山梨大学)による「36の基本動作」の整理
- 公益財団法人日本スポーツ協会「発育期のスポーツ活動ガイド」
この記事の内容は公開時点のものです。公開されている研究や公的な資料をもとに plax labo 編集部が書いています。体調・ケガ・食事に関わる個別の判断は、医師や専門家にご相談ください。








