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この差は、本人の努力でも才能でもありません。ただの生まれ月です。それなのに、現場ではこの差が「上手い子」「そうでない子」として扱われ、上手い子は試合に出て、ほめられて、さらに上手くなる。遅く生まれた子は、その逆の道を歩きます。
この偏りは「相対年齢効果」と呼ばれ、スポーツの世界で30年以上研究されています。教室がこの話を知っているかどうかで、遅く生まれた子の10年が変わります。この記事では、しくみを短く説明したあと、教室でできる5つの手を書きます。
- 生まれ月の差が、なぜ「才能の差」に見えてしまうのか
- プロ選手の生まれ月に残る偏りと、海外の対策(バイオバンディング)
- 選抜・チーム分け・記録・声かけで、教室ができる5つのこと
プロ選手の生まれ月は、偏っている
日本のプロサッカー選手やプロ野球選手の生まれ月を調べた研究では、4〜6月生まれが多く、1〜3月生まれが少ない傾向が報告されています。海外でも、学年の区切りが違うだけで、同じ形の偏りがアイスホッケーやサッカーで繰り返し見つかっています。
生まれ月で運動の才能が決まるわけがありません。起きているのはこういうことです。
- 小学生のとき、早く生まれた子が体格で有利
- 試合に出る・選抜に入る・ほめられる機会が増える
- 機会が増えたぶん、本当に上手くなる
- 遅く生まれた子は、機会が減り、「自分は下手だ」と思い、やめる
最初の差は生まれ月だけ。それが、機会の差を通して本物の差になり、プロの生まれ月にまで残る。これが相対年齢効果の正体です。言いかえると、遅く生まれた子の中に、埋もれたままやめていった子が大勢いるということです。
海外の対策:年齢でなく「体の成熟」で分ける

イングランドのプロサッカーのアカデミーでは、「バイオバンディング」という取り組みが研究されています。学年ではなく、体の成熟の度合い(身長の伸びの段階から推定)でグループを分けて試合をする方法です。
体格で勝てなくなった早熟の子は技術と判断で勝負せざるを得なくなり、体格で負けていた晩熟の子はボールに触る機会が増える。両方に学びがあったと報告されています。
教室でここまで正確にやる必要はありません。でも、考え方は借りられます。「学年」という箱を、ときどき外す。それだけです。
教室でできる5つの手
① 名簿に、生まれ月を書く
まず、知ること。名簿の生年月日を見て、4〜6月生まれ、7〜9月、10〜12月、1〜3月で色を分けてみてください。そのうえで、試合に出ている子、選抜に入っている子、「上手い」と思っている子に印をつける。偏っていたら、それは教室の目が生まれ月に引っぱられている証拠です。
② チーム分けの日を、生まれ月で切る
月に1回でよいので、学年ではなく生まれ月でグループを分ける日を作ります。4〜9月生まれと、10〜3月生まれ。あるいは、学年をまたいで、小2の遅生まれと小1の早生まれを同じグループに。
遅く生まれた子が、その日だけ「ボールにいちばん触れる子」になります。この経験が、やめないための燃料です。
③ 選抜は「いまの体格」でなく「伸び」で見る
選抜や上のクラスへの昇格を決めるとき、「いま上手い」ではなく「この半年でどれだけ伸びたか」を1つの基準に入れます。早く生まれた子の「いま」は、体格のぶん下駄をはいています。伸びは、下駄がききません。
半年前の記録と今の記録を並べる。それだけで、「伸びているのに選ばれていない子」が見えてきます。
④ ポジションと役割を固定しない
早く生まれた子がいつもフォワードで、遅く生まれた子がいつもディフェンス、ということは、気づかないうちに起きます。小学生のうちは、ポジションを全員が回る。身長の低い子がゴールキーパーをやり、身長の高い子が守備をやる日があってよい。
⑤ 本人比で記録し、本人比でほめる
早く生まれた子と遅く生まれた子を、同じ物差しで比べない。記録は本人の半年前と比べて残し、声かけも「クラスで3番」ではなく「半年前より2秒速い」で。遅く生まれた子は、本人比なら必ず伸びています。
保護者に、どう説明するか

「うちの子は下手だから」と言う保護者には、生まれ月の話をそのまま伝えてください。「同じ学年でも1年違う。小学生の1年は大きい。◯◯くんは1月生まれなので、いまは体格で損をしている。でも半年前と比べると、ここが伸びている」。
多くの保護者は、この話を聞いたことがありません。聞いた保護者は、わが子を見る目が変わります。そして、やめさせなくなります。
faqよくある質問
体格の大きい子を選ぶのは、勝つためには正しいのでは
小学生の試合に勝つためなら、正しい選び方です。ただ、中学・高校で伸びる子を育てるためなら、間違った選び方です。教室が何のためにあるかで、答えが変わります。小学生の勝利だけを目的にする教室は、多くありません。
遅く生まれた子を、ひいきすることになりませんか
ひいきではなく、下駄の高さをそろえることです。早く生まれた子は、何もしなくても下駄をはいています。そのことに気づかずに「公平に」選ぶと、生まれ月で選ぶことになります。
中学生でも、まだ差はありますか
身長の伸びの時期が終わるころ(中学の後半から高校)には、体格の差はほぼ消えます。ただ、小学生のときの機会の差は、技術と自信の差として残ります。差が消えるのは体格だけで、経験は消えません。だから、小学生のうちが大事です。
summaryまとめ
- 同じ学年に、最大12か月の差がある。小学生ではこれが体格と力の差になり、「上手い子」に見える
- 早く生まれた子に機会が集まり、本物の差になる。プロ選手の生まれ月にまで偏りが残る(相対年齢効果)
- 教室でできるのは5つ。名簿に生まれ月を書く・生まれ月でチーム分けする日を作る・選抜は伸びで見る・ポジションを固定しない・本人比で記録してほめる
- 保護者に生まれ月の話を伝える。わが子を見る目が変わる
遅く生まれた子の中に、埋もれたままやめていく子がいます。それを減らせるのは、教室だけです。
参考にした資料
- Musch, J., & Grondin, S. (2001). Unequal competition as an impediment to personal development: A review of the relative age effect in sport. Developmental Review, 21(2), 147–167.
- Nakata, H., & Sakamoto, K. (2011). Relative age effect in Japanese male athletes. Perceptual and Motor Skills, 113(2), 570–574.
- Cumming, S. P., et al. (2017). Bio-banding in sport: Applications to competition, talent identification, and strength and conditioning of youth athletes. Strength and Conditioning Journal, 39(2), 34–47.
この記事の内容は公開時点のものです。公開されている研究や公的な資料をもとに plax labo 編集部が書いています。体調・ケガ・食事に関わる個別の判断は、医師や専門家にご相談ください。







