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「運動神経」は生まれつき? 変えられる部分と、変えにくい部分を分けて考える

次の5つのうち、「運動神経」という言葉で説明できるものは、どれでしょう。

  • 対象保護者・指導者
  • 読む目安約6分
  • 区分読みもの・子どもの発達・教育

公開 2026.10.27 / plax labo 編集部

目次
  1. 50m走が速い
  2. 初めて見た動きを、すぐまねできる
  3. ボールを投げるのが上手い
  4. 跳び箱が跳べない
  5. 自転車にすぐ乗れた

答えは、全部です。そして、だから「運動神経」はあいまいな言葉です。速さ、まねのうまさ、投げる技術、跳ぶ技術、バランス。性質の違うものを、ひとつの言葉で呼んでいる。

この言葉がやっかいなのは、「生まれつき」とセットで使われることです。「うちの子は運動神経が悪いから」と言われた子は、やる前にあきらめます。この記事では、この言葉を一度ほどいて、変えにくいものと変えられるものに分けます。分けると、やることが見えてきます。

point
  • 「運動神経」という言葉が指しているものの正体
  • 変えにくいもの(体格・筋の質)と、変えられるもの(調整力・経験)の違い
  • 「運動神経が悪い」と言われた子に、家と教室でできること

「運動神経」という神経は、どこにもない

体の中に「運動神経」という名前の、1本の神経があるわけではありません。脳から筋肉へ命令を送る神経はありますが、それは誰にでも同じようにあります。

いわゆる「運動神経がいい」の中身を、研究の言葉で分けると、だいたいこうなります。

  • 体力:速さ・力・持久力。筋肉と心臓と肺の性能
  • 調整力(コーディネーション):体を思ったとおりに動かす力。バランス、リズム、反応、動きの切り替え、距離感
  • 動きの引き出し:これまでに経験した動きの種類と数

「運動神経がいい子」と言われているのは、たいてい2つめと3つめが高い子です。初めて見た動きをすぐまねできるのは、似た動きを前にやったことがあるから。ボールを捕れるのは、距離感と反応の経験があるから。

変えにくいもの

竹馬

正直に書くと、変えにくいものもあります。

  • 体格。身長、手足の長さ。これは遺伝の影響が大きい
  • 筋肉の質。速く縮む筋肉と、長く動ける筋肉の割合。これも生まれつきの差がある
  • 成長の時期。早く体が大きくなる子と、ゆっくりの子

これらは、短距離走のトップ選手になれるかどうか、という話には効きます。でも、運動が楽しめるか、ふつうに上手くなれるか、という話には、ほとんど効きません。学校の体育で困らない、好きなスポーツで仲間と一緒に動ける、というレベルは、体格に関係なく届きます。

変えられるもの

調整力と、動きの引き出しは、経験で育ちます。これは研究でも現場でも、はっきりしています。

文部科学省の「幼児期運動指針」が、幼児期に「多様な動き」を経験することをすすめているのは、まさにこのためです。走る・跳ぶ・投げる・捕る・ぶら下がる・転がる・バランスをとる。この種類が多い子ほど、新しい動きを覚えるのが速い。初めて見た動きを「あ、あれに似てる」と、体が気づけるからです。

逆に、「運動神経が悪い」と言われる子の多くは、経験した動きの種類が少ない。苦手だから避ける、避けるから経験が増えない、増えないからもっと苦手になる。この循環のどこかを切れば、変わります。

家でできること:動きの種類を増やす

けん玉

上手くする必要はありません。種類を増やすだけです。

  • 公園の遊具を、全部使う。ジャングルジム(のぼる・ぶら下がる)、鉄棒(回る)、すべり台(バランス)
  • ボールは、大きさの違うものを3つ。大きいボール(蹴る・抱える)、テニスボール(投げる・捕る)、風船(追う・はじく)
  • 歩き方を変える。スキップ、ケンケン、後ろ歩き、横歩き、くまさん歩き
  • 水の中。プールは、陸と違う動きを全部使う

どれも、週に1回でよい。「上手くなった」ではなく「やったことがある動きが増えた」を目標に。家でできる遊びは、別の記事(家でできる「運動あそび」10分)に書きました。

教室でできること:苦手な動きを、小さくして出す

運動が苦手な子は、できない動きの前で止まります。止まると経験が増えない。だから、止まらない大きさにして出します。

  • 跳び箱が跳べない → 跳び箱に手をついて、またぐだけ
  • 逆上がりができない → 鉄棒におなかをつけて、足を1回蹴るだけ
  • ボールが捕れない → 風船を捕る → 大きいボールをバウンドで → テニスボール

「できた」が1回出ると、その動きは引き出しに入ります。入った動きは、別の動きを覚えるときの手がかりになります。

大人になってからも、変わる

調整力が育つのは子どものころが中心ですが、大人になってから運動を始めた人が上達するのも、同じしくみです。経験が増えれば、引き出しが増える。「運動神経が悪いから」と言ってきた大人が、40歳でダンスを始めて踊れるようになる、ということはふつうに起きます。

子どもに「運動神経」の話をするなら、「生まれつき」の代わりに「やった動きの数」と言ってあげてください。それは、本当のことで、しかも変えられることです。

faqよくある質問

親が運動が苦手だと、子どもも苦手になりますか

体格や筋肉の質は、ある程度受け継がれます。でも、「動きの経験」は受け継がれません。親が苦手だと、家で体を動かす機会が減りがちで、それが子どもの経験の少なさになる。問題は遺伝ではなく、機会です。親が苦手でも、一緒に公園に行くことはできます。

何歳までに始めないと、手遅れですか

手遅れはありません。調整力がいちばん伸びやすいのは小学生のころと言われますが、中学生でも高校生でも、経験が増えれば伸びます。「ゴールデンエイジ」の話は、別の記事に詳しく書きました。

1つの競技をずっとやっているのに、運動神経が悪いままです

1つの競技で使う動きは、意外と限られています。サッカーなら、投げる・捕る・ぶら下がるは出てきません。その競技に無い動きを、別の場所で足す。それが、その競技の上達にも戻ってきます。

summaryまとめ

  • 「運動神経」という神経は無い。中身は体力・調整力・動きの引き出し。「いい子」はたいてい後ろの2つが高い
  • 体格と筋肉の質は変えにくい。調整力と経験は変えられる。ふつうに上手くなるレベルは、体格に関係なく届く
  • 家では動きの種類を増やす。教室では苦手な動きを小さくして出す
  • 「生まれつき」ではなく「やった動きの数」と言いかえる

運動神経が悪い子は、いません。やったことのない動きが多い子が、いるだけです。

参考にした資料

  • 文部科学省「幼児期運動指針」(2012年)
  • 中村和彦(山梨大学)による「36の基本動作」の整理
  • 公益財団法人日本スポーツ協会「発育期のスポーツ活動ガイド」(調整力・多様な動きの経験)

この記事の内容は公開時点のものです。公開されている研究や公的な資料をもとに plax labo 編集部が書いています。体調・ケガ・食事に関わる個別の判断は、医師や専門家にご相談ください。

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