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こういう子に、上履きのサイズを聞いてみてください。たいてい、2サイズ上がっています。できていたことができなくなる時期と、身長がいちばん伸びる時期は、ほぼ重なります。この記事では、そのしくみと、指導者・保護者が「あせらない」ための目安を書きます。
- 身長が伸びる時期に動きがぎこちなくなる、体の中のしくみ
- 「サボっている」と「クラムジー」を見分ける3つの目安
- その時期の練習で、やること・やらないこと
骨が先に伸びて、感覚があとから追いつく
身長の伸びがいちばん速くなる時期は、女の子で小学校の高学年、男の子で中学の初めごろにやってきます(文部科学省の学校保健統計で、1年あたりの伸びがいちばん大きくなる年齢)。このピークの前後1年くらいに、年に8〜10cm伸びる子もいます。
このとき体の中で起きていることは、おおざっぱに言うと3つです。
- 骨が先に伸びる。筋肉や腱は、骨が伸びたあとに追いつく。だからいっとき、体が「つっぱった」状態になる
- 伸びるのは手足から。胴体より先に腕と脚が長くなるので、重心の位置と、手足の届く距離が変わる
- 頭の中の「体の地図」が古いまま。脳は「自分の脚はこのくらいの長さ」という感覚で動きを組んでいる。それが数か月のあいだ、実物より短い
つまり、本人は半年前の体の感覚で、いまの体を動かしている。足が思ったより長いので、ボールに早く触れてしまう。ジャンプの着地点が思ったより先にある。これが、急に不器用になる正体です。
研究の世界では、この時期の一時的な不器用さは「思春期の不器用さ」(adolescent awkwardness)と呼ばれ、スポーツの現場では「クラムジー」(clumsy)という言い方で知られています。成長のピークのころに、動きのなめらかさや、バランスの指標が一度下がる子がいることは、複数の研究を集めた総説でも報告されています。全員に起きるわけではありませんが、起きる子には、はっきり起きます。
「サボっている」と見分ける3つの目安

困るのは、見た目が「集中していない」「気が抜けている」とそっくりなことです。叱る前に、3つ確かめてください。
- 身長が伸びているか。半年で3cm以上、あるいはズボンの丈や靴のサイズが続けて変わっているか
- 体が固くなっていないか。前屈で床に手がつかなくなった、しゃがむとかかとが浮く、など。前はできていたのに、が目安
- できないのが「新しいこと」ではなく「できていたこと」か。新しい技ができないのは練習の問題。できていた技ができないのは、体の変化の可能性が高い
3つのうち2つ当たっていれば、まずクラムジーを疑ってよいと思います。
この時期にやること
「戻るから」と、先に言う
いちばん効くのは、本人に理由を教えることです。「いま、脚が先に長くなっていて、頭がまだ追いついていない。追いつくまでの数か月、前よりやりにくいのはふつう。みんな通る」。これを知らない子は、自分の才能が消えたと思い、やめたくなります。知っている子は、待てます。
保護者にも同じことを伝えてください。家で「最近下手になったね」と言われるのが、いちばんこたえます。
基礎の動きに時間を戻す
細かい技術より、走る・止まる・跳ぶ・着地するといった土台の動きに時間を増やします。新しい体で、これらをもう一度覚え直す時期だからです。片足立ち、スキップ、左右へのサイドステップ、低いハードルをまたぐ。地味ですが、ここが新しい「体の地図」を描き直します。
比べない。本人の中で比べる
同じ学年でも、伸びる時期は1〜2年ずれます。この時期の子は、伸びていない友だちと比べると必ず負けます。比べるなら半年前の自分。「前はできていた」ではなく「来月また測ろう」です。
ケガに注意する
骨が先に伸びて筋肉が引っ張られているこの時期は、ひざの下やかかとに痛みが出やすい時期でもあります。痛みが続くなら、練習量を落として、整形外科へ。詳しくは別の記事(成長期に多いケガ)で書きます。
やらないこと

- フォームを細かく直さない。いま直しても、体がまた変わる。直すのは伸びが落ち着いてから
- 練習量を増やさない。「下手になったから練習を増やす」は、ケガにいちばん近い道
- ポジションや選抜から外さない。数か月で戻る子を、この時期の見た目で判断すると、戻ったときにチームにいない
faqよくある質問
どのくらい続きますか
目安は数か月から1年ほどです。伸びの速さが落ち着くと、筋肉と感覚が追いついて、たいていは前より良い動きになります。手足が長くなったぶん、できることが増えるからです。
練習を休ませたほうがいいですか
休む必要はありません。ただ「できないことを繰り返させる」練習は、本人の自信を削るだけです。基礎の動きと、できる課題の割合を増やして、続けさせてください。痛みがあるときだけ、休みます。
女の子にも起きますか
起きます。女の子は男の子より1〜2年早く、小学校の高学年ごろにやってきます。しかもこの時期は体型の変化が気になり始める時期でもあるので、「体が変わっている最中」と言葉で伝えることが、男の子以上に大事です。
summaryまとめ
- 身長がいちばん伸びる時期に、できていたことができなくなる子がいる。骨が先に伸び、感覚があとから追いつくため
- 見分けるのは、身長の伸び・体の固さ・「できていたこと」ができないかの3つ
- やることは、理由を教える・基礎の動きに戻す・本人の中で比べる。やらないことは、フォームの細かい修正・練習量の増加・選抜からの除外
「下手になった」のではなく、「新しい体に乗り換え中」です。乗りこなすまで、半年ほど。そのあいだコーチと親が待てるかどうかで、その子がスポーツを続けるかどうかが決まります。
参考にした資料
- 文部科学省「学校保健統計調査」(年齢別の身長の平均値・年間発育量)
- Quatman-Yates, C. C., et al. (2012). A systematic review of sensorimotor function during adolescence: a developmental stage of increased motor awkwardness? British Journal of Sports Medicine, 46(9), 649–655.
- 公益財団法人日本スポーツ協会「発育期のスポーツ活動ガイド」
この記事の内容は公開時点のものです。公開されている研究や公的な資料をもとに plax labo 編集部が書いています。体調・ケガ・食事に関わる個別の判断は、医師や専門家にご相談ください。








