目次
この記事では、ウォームアップが何のためにあるのかを3つに分け、研究でケガが減ったと報告されているプログラムの考え方を借りて、5分・道具なしで回せる形にします。やることは減って、効き目は上がります。
- ウォームアップの3つの目的(体温・動き・頭)
- 練習前の長い静的ストレッチが、すすめられなくなった理由
- 道具なし・5分で回せる、どの競技でも使える形
目的は3つ。体温・動き・頭
ウォームアップの目的を1つずつ言える指導者は、意外と少ないです。整理すると3つです。
- 体温を上げる。筋肉は温まると伸びやすく、神経の伝わりも速くなる。軽く息が上がり、うっすら汗ばむ程度まで
- これから使う動きを、ゆっくりからなぞる。走る・止まる・跳ぶ・着地する・切り返す。いきなり全力ではなく、段階をつけて
- 頭を練習に向ける。学校から来たばかりの子の頭は、まだ学校にいる。合図に反応する・まわりを見る動きで、切り替える
「2周走ってストレッチ」は、1は満たします。でも2と3がありません。走ってから止まって、じっと伸ばして、そのあといきなり切り返しの練習に入る。ケガが起きやすい動き(着地・切り返し)を、一度もなぞらずに本番に入っているわけです。
練習前の「じっと伸ばす」は、少なくていい

ここ20年ほどで、練習前のストレッチの考え方は変わりました。かつて当たり前だった静的ストレッチ(じっと伸ばして20〜30秒止める)は、練習の直前に長くやると、そのあとのジャンプやダッシュの力が少し落ちる、という報告がいくつも出ています。ケガを減らす効果も、はっきりとは確かめられていません。
代わりにすすめられているのが、動きながら伸ばすこと(動的ストレッチ)。脚を前後に振る、大きく踏み出す、腕を回しながら歩く。体を温めながら、関節を動く範囲いっぱいに使います。
じっと伸ばすストレッチをやめる必要はありません。場所を変えるだけです。練習の最後(クールダウン)や、お風呂上がりに。柔軟性を上げるには、そちらのほうが向いています。
5分の形:道具なし、どの競技でも
20m ほどの場所があればできます。1〜4は往復、5は10回。合計でちょうど5分ほど。
① 歩く → 走る(1分)
小走りで往復。2往復めは、合図でその場で止まる・また走る。頭の切り替えがここで始まります。
② 動きながら伸ばす(1分30秒)
- 大きく踏み出して、後ろの脚のつけ根を伸ばす(ランジ・歩きながら)
- 脚を前後に振る(手は壁や友だちの肩)。左右10回ずつ
- 腕を大きく回しながら歩く(前・後ろ)
③ スキップとサイドステップ(1分)
- 高く上がるスキップ、速いスキップ
- サイドステップ、クロスステップ。進む向きを途中で合図で変える
④ 跳んで、止まる(1分)
両足でジャンプして、着地で膝を曲げて1秒止まる。音を立てずに降りる。これが、着地のケガを減らす核になる動き。慣れたら片足で。
⑤ 短いダッシュ(30秒)
10m を3本。1本めは7割、2本めは9割、3本めは全力。全力で走る前に、全力に近い走りを一度通しておく。
これで、体温・動き・頭の3つが全部入ります。競技に合わせて、ボールやラケットを持ってやる形に変えてもかまいません。
「待ち時間」をウォームアップにしない

よくあるのが、ウォームアップの最中に列ができて、子どもが並んで待っている形。待っているあいだに体は冷えます。
- 一列ではなく、横に広がって同時に(全員が同じ向きに走れば、ぶつからない)
- 往復の形にする(戻りも動きになる)
- コーチが前で見本を見せ続けるのではなく、最初に1回見せたら、あとは一緒に動く
faqよくある質問
幼児や低学年にも、同じ形でいいですか
動きはそのままで、遊びの名前を付けます。「忍者スキップ」「カエルジャンプ、着地はしずかに」「合図で止まる=だるまさんがころんだ」。幼児は③と④を遊びとしてやるだけで十分で、⑤のダッシュは「よーいドン」の遊びに。
冬は、もっと長くしたほうがいいですか
①と③を少し長めにして、体が温まるまで(うっすら汗ばむまで)を目安にします。長い静的ストレッチを足すのではなく、動く時間を足します。上着は、温まってから脱ぐ。
試合の前は、どうすればいいですか
形は同じで、最後の⑤を競技の動き(シュート、サーブ、ダッシュ)に置きかえます。試合の直前にじっと伸ばすストレッチを長くやるのは、避けたほうが無難です。
summaryまとめ
- ウォームアップの目的は、体温・動き・頭の3つ
- 練習の前の「じっと伸ばす」は少なくてよい。動きながら伸ばし、じっと伸ばすのは練習の最後に
- ケガが起きやすい動き(着地・切り返し)を、低い強度で先になぞる。これが核
- 5分で足りる。並ばせず、横に広がって同時に動く
「2周走ってストレッチ」を続けてきた教室ほど、変えたときの違いがはっきり出ます。まず1週間。
参考にした資料
- Soligard, T., et al. (2008). Comprehensive warm-up programme to prevent injuries in young female footballers: cluster randomised controlled trial. BMJ, 337, a2469.
- Behm, D. G., et al. (2016). Acute effects of muscle stretching on physical performance, range of motion, and injury incidence in healthy active individuals: a systematic review. Applied Physiology, Nutrition, and Metabolism, 41(1), 1–11.
- FIFA Medical Network「FIFA 11+」(ウォームアッププログラムの公開資料)
この記事の内容は公開時点のものです。公開されている研究や公的な資料をもとに plax labo 編集部が書いています。体調・ケガ・食事に関わる個別の判断は、医師や専門家にご相談ください。









