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この「大丈夫そうだから続ける」が、頭のケガでいちばん危ない判断です。脳振盪は、意識を失わなくても起きています。こぶが無くても起きています。そして、見た目では分かりません。この記事では、頭を打った子に対して、その場で何を見て、何をして、何をしないかを書きます。医療の判断は医師がするもので、ここに書くのは、教室の側が「受診につなぐ」ための目安です。
- 脳振盪が「意識を失わなくても起きる」こと、見た目で分からないこと
- その場で見るサインと、すぐ救急車を呼ぶ赤信号
- 「疑わしければ、その日は出さない」の原則と、翌日以降の段階的な戻し方
脳振盪は、意識を失わなくても起きている
脳振盪は、頭に衝撃が加わって、脳の働きが一時的に乱れた状態です。スポーツの脳振盪についての国際的な会議の合意文書(Patricios ほか, 2023)では、意識を失うのは脳振盪の一部にすぎず、多くは意識を失わないとされています。「気絶していないから大丈夫」は、成り立ちません。
もう1つ大事なのは、症状があとから出ることがあること。打った直後は「大丈夫」で、30分後に頭痛と吐き気が出る。その日の夜に、ぼんやりする。だから、直後の「大丈夫」を信じてはいけません。
日本では、日本臨床スポーツ医学会が「頭部外傷10か条の提言」をまとめています。その中でも、頭を打ったあとに意識が戻っても、その日は競技に戻さないことが基本として示されています。
その場で見るサイン

頭を打った子を座らせて、次を見ます。1つでも当てはまれば、脳振盪を疑います。
- 頭痛・頭が重い
- 吐き気・気持ち悪い
- ふらつく。立たせて、まっすぐ歩けるか
- ぼんやりしている・反応が遅い・目の焦点が合わない
- 何が起きたか覚えていない。「どこで打った?」「今日は何曜日?」「いまやっていた練習は?」に答えられない
- いつもと違う。急に泣く、急に怒る、しゃべり方がおかしい
- 光や音をいやがる
子どもは「大丈夫」と言います。続けたいから、迷惑をかけたくないから。だから、本人の言葉ではなく、コーチが見たことで判断します。質問は、本人に「大丈夫?」ではなく、「何が起きたか話して」「ここまで歩いて」と、見える形で。
すぐ救急車を呼ぶ「赤信号」
次のどれかがあれば、迷わず119番です。
- 意識が無い、または呼びかけへの反応が悪くなっていく
- けいれん
- 嘔吐をくり返す
- 首の痛み、手足のしびれや力の入りにくさ
- 頭痛がどんどん強くなる
- ろれつが回らない、ものが二重に見える
- 瞳の大きさが左右で違う
判断に迷ったら、呼んでください。「大げさだったら恥ずかしい」より、「呼ばなかった」のほうが重い。救急車を待つあいだは、動かさず、首を固定して、そばにいる。
「疑わしければ、その日は出さない」

赤信号が無くても、上のサインが1つでもあれば、その日の練習には戻しません。これが国際的な原則です(英語では "If in doubt, sit them out")。症状が10分で消えても、戻さない。
理由は2つ。1つは、脳振盪の直後にもう一度頭を打つと、重い結果になることがあること。もう1つは、症状があとから出るので、その場の判断が当てにならないこと。「本人が戻りたがっている」「大事な試合」は、戻す理由になりません。
その日にやることは、次のとおりです。
- 練習から外し、静かな場所で、大人が付いて様子を見る。1人にしない
- 保護者に連絡して、迎えに来てもらう。帰り道も1人で帰さない
- 保護者に、その日のうちに医療機関を受診するよう伝える(脳神経外科、または救急)
- 教室の記録に残す。いつ・どこで・どう打ったか・どんなサインがあったか・誰が見たか
翌日以降。すぐには戻さない
受診して「脳振盪」と言われたら、戻し方は医師の指示に従います。一般的な指針では、1〜2日は体と頭を休め(画面も控える)、症状が消えてから、軽い運動 → 競技に近い運動 → 接触のない練習 → 通常の練習、と段階を踏んで、各段階で症状が出ないことを確かめながら戻します。1段階に最低1日。症状が出たら、前の段階に戻る。
教室としては、「医師が許可するまで戻さない」を決まりにしておくと、保護者とも本人とも揉めません。「もう元気なので」と言われても、「医師の許可を」で通す。
faqよくある質問
こぶができていて、本人は元気です
こぶの有無と脳振盪は関係ありません。こぶは頭皮の内出血で、脳の中とは別です。上のサインで見てください。サインが無ければ、その日は見学にして、保護者に「頭を打ったので、今夜は様子を見てください。頭痛・吐き気・ぼんやりが出たら受診を」と伝えます。
軽く打っただけで、泣きもしませんでした
衝撃が軽く、サインが何も無ければ、練習に戻してかまいません。ただし、その日の残りはいつもより気をつけて見る。保護者には、迎えのときに「頭を軽く打ちました。様子を見てください」と必ず伝えます。伝えないと、夜に症状が出たとき、保護者は原因が分かりません。
保護者が「大丈夫だから」と受診しません
教室としては、受診を勧めたこと・サインがあったことを記録に残してください。そのうえで、「医師の許可があるまで練習に戻せない決まりです」と伝えると、受診につながることが多いです。
summaryまとめ
- 脳振盪は 意識を失わなくても、こぶが無くても 起きている。症状はあとから出ることがある
- その場で見るのは、本人の「大丈夫」ではなく コーチが見たサイン(頭痛・吐き気・ふらつき・ぼんやり・覚えていない・いつもと違う)
- 赤信号(意識・けいれん・くり返す嘔吐・首・しびれ・強くなる頭痛)は 迷わず119番
- サインが1つでもあれば その日は出さない。保護者に連絡し、その日のうちに受診を
- 戻すのは 医師の許可のあと、段階を踏んで。教室の決まりとして先に書いておく
頭のケガは、その場で軽く見えたものほど、あとで重くなります。「疑わしければ、その日は出さない」を、迷う前の決まりにしておいてください。
参考にした資料
- Patricios, J. S., et al. (2023). Consensus statement on concussion in sport: The 6th International Conference on Concussion in Sport – Amsterdam, October 2022. British Journal of Sports Medicine, 57(11), 695–711.
- 日本臨床スポーツ医学会 学術委員会 脳神経外科部会「頭部外傷10か条の提言」(第2版・2015)
- 公益財団法人日本スポーツ協会「スポーツ事故防止ハンドブック」(頭頸部の外傷)
この記事の内容は公開時点のものです。公開されている研究や公的な資料をもとに plax labo 編集部が書いています。体調・ケガ・食事に関わる個別の判断は、医師や専門家にご相談ください。







