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アメリカの中高生のアスリート112人を21か月追った研究で、ふだんの睡眠が8時間未満の子は、8時間以上の子に比べて、ケガをする確率が約1.7倍だった、と報告されています(Milewski ほか, 2014)。学年が上がるほどケガも増えていましたが、睡眠時間の影響はそれとは別に残りました。112人という小さな研究で、本人の申告にもとづく観察研究なので、「寝不足がケガを起こす」と因果まで断定はできません。それでも、練習の内容を見直す前に、寝ている時間を見直す価値がある、と教えてくれます。
- 睡眠が8時間を切るとケガが増える、という研究の中身と読み方
- 年齢ごとに要る睡眠時間の目安(小学生9〜12時間・中高生8〜10時間)
- 練習のある日に就寝時刻を守る3つの工夫と、コーチが寝不足の子にできること
なぜ寝不足でケガが増えるのか
はっきりした1つの理由があるわけではなく、いくつかが重なると考えられています。
- 反応が遅れる。寝不足のとき、注意と反応の速さが落ちることは多くの研究で示されています。ボールや相手の動きへの反応が一拍遅れれば、接触や着地の失敗が増える
- 体の回復が追いつかない。成長期の体は、寝ているあいだに筋肉や骨を修復し、成長ホルモンも多く出ます。回復が足りないまま次の練習に入れば、疲れが積もり、フォームが崩れる
- 判断が雑になる。「ここは無理しない」という判断が、寝不足だと鈍る
どれも、「その日1回の寝不足」より、何日も続く少しずつの寝不足で効いてきます。平日に毎日1時間足りない、が危ない形です。
子どもに要る睡眠は、思っているより長い

厚生労働省の「健康づくりのための睡眠ガイド2023」では、小学生は9〜12時間、中学生・高校生は8〜10時間の睡眠が目安とされています。アメリカ睡眠医学会の2016年の合意文書も、6〜12歳は9〜12時間、13〜18歳は8〜10時間と、ほぼ同じ数字です。
朝7時に起きる小学生なら、夜9時〜10時には寝ている必要があります。夕方の練習が7時に終わり、帰って夕食、風呂、宿題。それで9時半に布団に入れる家庭は、実はそう多くありません。練習のある日は、何かを削らないと睡眠が削れる構造になっています。
上の研究の「8時間」は中高生の線です。小学生なら、9時間を切っていたら黄色信号、と考えてください。
練習のある日に、就寝時刻を守る3つの工夫
就寝時刻を守るコツは、「早く寝なさい」ではなく、寝る前の時間を短くする段取りです。
- 就寝時刻を先に決めて、逆算する。「9時半に布団」と決めたら、風呂は8時半、夕食は7時半、と後ろから並べる。練習の日は、この並びを前の日に家族で共有しておく
- 帰ってすぐ食べられる夕食にする。練習から帰って30分以内に食べられるよう、温めるだけの形にしておく。夕食が遅れると、全部が後ろにずれる。練習の翌日に疲れを残さない夜の流れは、別の記事(練習の翌日に疲れを残さない)に書きました
- 宿題は練習の前か、翌朝に。練習のあとの宿題は、時間がかかるうえに眠気と戦うことになる。学校から帰って練習までの30分、または翌朝の15分に動かせないか、試してみてください
画面(スマホ・ゲーム・動画)は、寝る1時間前には終える。これは多くの指針で共通する推奨です。
コーチが、寝不足の子にできること

コーチは子どもの睡眠を直接は変えられませんが、寝不足の日を見分けて、その日の負荷を下げることはできます。
- あくびが多い、目が赤い、ウォームアップで動きが鈍い、いつもできることで失敗する。こういう日は「寝不足かも」と疑う
- その日は、接触の多いゲームや、高さのある技(跳び箱の高い段・鉄棒の新しい技)を避ける。「今日はここまで」と判断するのは、コーチの仕事です
- 本人に「昨日、何時に寝た?」と、責めずに聞く。11時、12時という答えが続くなら、保護者に伝える
練習の時間帯そのものも、見直す余地があります。夜8時・9時まで続く練習は、小学生の睡眠を確実に削ります。終わる時刻を30分早めるだけで、在籍の子ども全員の睡眠が30分増える。ケガの予防として、これほど効率のよい手はあまりありません。
faqよくある質問
朝練がある子は、どうしても睡眠が足りません
朝練の分、寝る時刻を早めるしかありません。それが無理なら、朝練の頻度を減らす判断も要ります。小学生の朝練で得られるものより、慢性的な寝不足で失うもの(ケガ・集中力)のほうが大きいことが多いです。
休日に寝だめすれば取り返せますか
平日の寝不足を休日で完全に取り返すことはできない、と多くの研究で言われています。休日に起きる時刻が平日と2時間以上ずれると、体内時計が乱れ、月曜の朝がつらくなります。ずれは1時間以内に。
寝つきが悪い子には
寝る前の画面をやめる、寝る1〜2時間前に風呂に入る、部屋を暗くする。この3つが基本です。それでも続くなら、小児科に相談してください。
summaryまとめ
- 中高生のアスリートの研究で、睡眠8時間未満の子はケガの確率が約1.7倍。練習量より睡眠のほうが強く効いていた
- 小学生に要る睡眠は9〜12時間、中高生は8〜10時間。朝7時起きなら、夜9〜10時には寝ている
- 就寝時刻は「早く寝なさい」ではなく、逆算・すぐ食べられる夕食・宿題を前か翌朝にの段取りで守る
- コーチは寝不足の日を見分けて、その日の負荷を下げる。練習の終わる時刻を30分早めるのは、効率のよいケガ予防
- 試合の前日は「早く」より「いつもと同じ時刻」
ケガの予防は、練習のメニューの前に、布団に入る時刻から始まっています。
参考にした資料
- Milewski, M. D., Skaggs, D. L., Bishop, G. A., Pace, J. L., Ibrahim, D. A., Wren, T. A. L., & Barzdukas, A. (2014). Chronic lack of sleep is associated with increased sports injuries in adolescent athletes. Journal of Pediatric Orthopaedics, 34(2), 129–133.
- 厚生労働省(2024)「健康づくりのための睡眠ガイド2023」(こども向けの推奨事項)
- Paruthi, S., et al. (2016). Recommended amount of sleep for pediatric populations: A consensus statement of the American Academy of Sleep Medicine. Journal of Clinical Sleep Medicine, 12(6), 785–786.
この記事の内容は公開時点のものです。公開されている研究や公的な資料をもとに plax labo 編集部が書いています。体調・ケガ・食事に関わる個別の判断は、医師や専門家にご相談ください。







