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でも、「やる気がない」は、理由ではなく見た目の名前です。熱があるときに「元気がない」と言うのと同じで、その下に何かがあります。やる気を出させようとして声を大きくする前に、下にあるものを探す。この記事では、その探し方を、4つの引き出しの順番で書きます。
- 「やる気」は性格ではなく、条件がそろうと出てくるもの、という考え方
- 子どもが動かないときに順に開ける4つの引き出し
- 自分で決める・できる気がする・つながっている、を練習に組み込む方法
やる気は性格ではなく、条件がそろうと出てくる
心理学で広く使われている「自己決定理論」(デシとライアン)は、人が自分から動くために、3つの欲求が満たされている必要があると説明します。
- 自分で決めている(自律性)… やらされているのではなく、選んでいる感覚
- できる気がする(有能感)… 努力すれば届く、という手ごたえ
- つながっている(関係性)… ここに自分の居場所がある、という安心
この3つのどれかが欠けると、動きは鈍くなります。これは、子どもの性格ではなく状況の話です。同じ子が、別の教室では生き生きしている、ということがよく起きるのはこのためです。
この3つの前に、もうひとつ確かめることがあります。体です。合わせて4つの引き出しを、上から順に開けます。
引き出し① 体:眠い・空腹・痛い

いちばん多くて、いちばん見落とされる理由です。
- 寝ていない。小学生は9〜12時間の睡眠が目安ですが、習い事と宿題で7時間を切っている子は珍しくありません
- 食べていない。夕方の練習に、昼食から何も入れずに来ている
- 痛い。言わないだけで、どこかをかばっている。詳しくは別の記事(「痛い」と言えない子)に
これは「やる気」の問題ではなく、動けないのです。叱ると、ますます動けなくなります。確かめ方は簡単で、「昨日、何時に寝た?」「今日、おやつ食べた?」「どこか痛い?」の3つを聞くだけ。この引き出しに原因があるなら、練習の工夫では直りません。保護者に伝えるのが仕事です。
引き出し② 自分で決めていない
親に言われて来ている。やる競技を選んでいない。練習の中身もコーチが全部決める。こういう子は、言われたことはやりますが、言われるまで動きません。「やる気がない」に、いちばん見える形です。
効くのは、小さな選択を渡すことです。
- 「今日の最初の練習、ドリブルとパス、どっちからやる?」
- 「コーンの距離、3つから選んでいいよ」
- 「最後の5分、何をやりたい?」
大きな選択(競技をやめるかどうか)ではなく、小さな選択を毎回。自分で選んだことには、人は動きます。これは、子どもも大人も同じです。
引き出し③ できる気がしない

課題がむずかしすぎる、あるいは、何をすればできるのかが分からない。この状態が続くと、子どもは「やらない」ことで自分を守ります。やらなければ、できないことがばれないからです。
見分け方は、できる課題に戻したとき、動くかどうか。難しさを一段下げて動き始めるなら、原因はここです。
効くのは、課題を小さく割ること。「逆上がり」ではなく「鉄棒におなかをつける」まで下げる。できたら、次の1段。成功率が5〜7割になる場所を探す。できる気がし始めると、子どもは勝手に動きます。
引き出し④ つながっていない
友だちがいない。仲の良かった子がやめた。グループ分けでいつも余る。コーチに名前を呼ばれない。こういう子は、練習の内容と関係なく、動きが鈍くなります。ここにいる理由が無いからです。
見分け方は、休憩のときに誰といるか。1人でいる、あるいは、いつもコーチのそばにいる子は、この引き出しを疑います。
効くのは、役割と、名前です。「今日はボール係をお願い」「◯◯と2人組で」。そして、練習中に名前を3回呼ぶ。つながりは、言葉より頼まれることで生まれます。
「やる気を出せ」と言わない
4つの引き出しのどれにも、「やる気を出せ」という言葉は入っていません。この言葉は、原因を本人に返してしまう言葉です。言われた子は、「自分はやる気のない人間なんだ」と思い、ますます動かなくなります。
代わりに言うのは、引き出しごとの言葉です。「何時に寝た?」「どっちからやる?」「ここまでできたら合格」「◯◯と組んで」。どれも、やる気という言葉を使わずに、やる気の条件を作っています。
faqよくある質問
全員がだらけているときは、どうすればいいですか
全員なら、子どもではなく練習の側の問題です。待ち時間が長い、説明が長い、課題がやさしすぎる、のどれか。1人の「やる気」ではなく、練習の形を見直してください。
保護者から「やる気がないので、厳しく言ってください」と頼まれます
「厳しく言う」は、どの引き出しにも効きません。保護者には、引き出しの話をそのまま伝えて、「家での睡眠と食事」(①)を一緒に見てもらうのがいちばん早いです。そこに原因があることが、とても多い。
選択を渡すと、楽なほうばかり選びます
最初はそれでよい。「自分で選んだ」経験が先です。楽なほうを選び続ける子には、2つの選択肢の両方を「少しむずかしい」にします。「コーンの距離、5mと7m、どっち?」のように。どちらを選んでも挑戦になる形にすれば、楽なほうは無くなります。
summaryまとめ
- 「やる気がない」は理由ではなく、見た目の名前。下に原因がある
- 引き出しは4つ、上から順に。体(眠い・空腹・痛い)→ 自分で決めていない → できる気がしない → つながっていない
- 効く手は、保護者に伝える・小さな選択を渡す・課題を小さく割る・役割と名前
- 「やる気を出せ」は言わない。やる気の条件を作る
やる気は、出させるものではなく、出てくる条件をそろえるものです。
参考にした資料
- Ryan, R. M., & Deci, E. L. (2000). Self-determination theory and the facilitation of intrinsic motivation, social development, and well-being. American Psychologist, 55(1), 68–78.
- American Academy of Sleep Medicine (2016). Recommended amount of sleep for pediatric populations: a consensus statement. Journal of Clinical Sleep Medicine, 12(6), 785–786.
この記事の内容は公開時点のものです。公開されている研究や公的な資料をもとに plax labo 編集部が書いています。体調・ケガ・食事に関わる個別の判断は、医師や専門家にご相談ください。







