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見本が下手だったのではありません。見せ方が、子どもの見る力に合っていなかったのです。見本は、見せれば伝わるものではなく、どこから・何回・どこを見させるかで、伝わり方が変わります。この記事では、運動学習の研究で分かっていることを借りて、見せ方を4つの点で変えます。どれも明日の練習からできます。
- 正面から見せた見本が、子どもに「逆」に伝わる理由
- 横から・3回・見る点を1つ、の見せ方
- コーチより「少し上手い子」の見本が効くことがある、という研究
正面から見せると、逆に伝わる
コーチが子どもと向かい合って見本を見せると、コーチの右手は、子どもから見て左側にあります。低学年の子は、これを鏡のようにまねします。コーチが右足で蹴ると、子どもは左足で蹴る。「右だよ」と言われても、目で見たものが優先されます。
直し方は2つ。
- 横から見せる。コーチが子どもと同じ方向を向いて、横に立つ。子どもは、コーチの体の向きをそのまま自分の体に重ねられる。蹴る・投げる・跳ぶ、たいていの動きは、横から見たほうが分かる
- 背中を向けて見せる。同じ方向を向いて、子どもの前に立つ。左右がそのまま伝わる。ダンスやリズムの動きは、この形
正面から見せてよいのは、「顔の向き」や「両手を広げる」のような、左右の無い動きだけです。
3回見せる:ゆっくり → ふつう → ゆっくり

1回の見本は、子どもには速すぎます。見本の途中で、目がついていかない。
3回見せます。1回目はゆっくり、動きの形が見えるように。2回目はふつうの速さで、本当の動きが分かるように。3回目はもう一度ゆっくり、1回目で見落としたところを拾えるように。
3回で30秒ほど。1回見せて3分説明するより、3回見せて説明しないほうが、速く伝わります。
「ここを見て」を、1つだけ
見本を見せるとき、子どもはどこを見ているでしょうか。たいていは、ボールか、コーチの顔です。見てほしい足や腕を、見ていません。
見せる前に、見る場所を1つだけ言います。「足の裏を見て」「ひじがどこにあるか見て」「着地の音を聞いて」。1つに絞るのがポイントで、「足とひじと目線を見て」では、結局どれも見られません。
見る場所を指定すると、見本のあとの問いかけも作れます。「足の裏、どうなってた?」。子どもが答えられれば、見ていた。答えられなければ、もう1回見せる。
少し上手い子に、見本をさせる

意外に思われるかもしれませんが、運動学習の研究には、完璧な見本だけを見るより、まだ上手くない人の見本と組み合わせて見たほうが学びやすいという報告があります。完璧な見本は「何が正しいか」は見せますが、「どこで間違えやすいか」は見せません。上手くない人の見本を見ると、学ぶ側は「ここが違う」と自分で気づき、その気づきが自分の動きに戻ってきます。
教室で使うなら、こうです。
- コーチの見本のあとに、少し上手い子に同じ動きをしてもらう
- 「コーチと、どこが違った?」と全員に聞く
- 違いを見つけた子は、その違いを自分の動きで直せる
見本をした子は、みんなに見られて少し緊張しますが、「見本をお願いされた」ことは、その子の自信になります。上手い子だけでなく、その日いちばん伸びた子に頼むと、全員に回ってきます。
見本が「できない」動きのとき
コーチ自身が、きれいに見本を見せられない動きもあります。年齢とともに、できなくなる技もある。そのときは、無理に見せなくてよい。
- 動画を使う。スマホで、上手い人の動きをゆっくり再生する。横から撮られたものを選ぶ
- 上手い子に頼む。「見本、お願いできる?」
- 部分だけ見せる。全部はできなくても、「最初の構え」「最後の着地」だけなら見せられる
下手な見本を見せるより、見せないほうがよい場面はあります。子どもは、見本の形をそのまま覚えるからです。
faqよくある質問
人数が多くて、横から見せると後ろの子に見えません
2列にして、前の列を座らせる。それでも見えないなら、グループを2つに分けて2回見せる。全員に見えない見本は、見せていないのと同じです。3回見せるうちの1回を、場所を変えて見せる手もあります。
見本を見せても、低学年はすぐに忘れます
低学年は、見本を「覚えて再現する」ことがまだ苦手です。見本のあとに、コーチと一緒に、同時に動く。コーチが横で同じ動きをしながら、「ここで足を上げて」と言う。見本と実行を分けずに、重ねる形が、低学年には合います。
動画を見せると、子どもが動画に夢中になって動きません
見せる時間を区切ります。「10秒だけ見て、やってみよう」。何度も見たがる子には、「3回やったら、もう1回見せる」。動画は便利ですが、見る時間が動く時間を食うと、本末転倒です。
summaryまとめ
- 正面の見本は、低学年に鏡のように伝わる。横からか、背中を向けて見せる
- 3回見せる。ゆっくり・ふつう・ゆっくり。説明より、回数
- 見る場所を1つ言ってから見せる。見せたあとに「どうなってた?」と聞く
- 少し上手い子の見本を組み合わせると、「どこが違うか」に気づける
- 見せたら、すぐ動かす。直すのは動いたあと
見本は、コーチが上手いことを見せる時間ではなく、子どもが見るための時間です。
参考にした資料
- Rohbanfard, H., & Proteau, L. (2011). Learning through observation: a combination of expert and novice models favors learning. Experimental Brain Research, 215(3–4), 183–197.
- Wulf, G. (2013). Attentional focus and motor learning: a review of 15 years. International Review of Sport and Exercise Psychology, 6(1), 77–104.
この記事の内容は公開時点のものです。公開されている研究や公的な資料をもとに plax labo 編集部が書いています。体調・ケガ・食事に関わる個別の判断は、医師や専門家にご相談ください。







