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coaching

「ちゃんとやって」が伝わらない理由。子どもに届く指示は「動きの言葉」でできている

「ちゃんと走って」「もっとしっかり」「集中して」。練習中に、つい出る言葉です。言われた子は返事をします。でも、動きは変わらない。

  • 対象指導者・保護者
  • 読む目安約6分
  • 区分読みもの・指導・声かけ

公開 2026.10.13 / plax labo 編集部

目次

変わらないのは、子どもがやる気を出していないからではありません。「ちゃんと」には、何をすればいいかが入っていないからです。この記事では、指示が届く言葉と届かない言葉の違いを、運動の学習の研究と、現場の言い換えで書きます。

point
  • 「ちゃんと」「しっかり」が、なぜ指示として機能しないのか
  • 研究で分かっている、動きが変わりやすい言葉の向け方
  • 1回の指示を「動詞1つ」にする、練習での言い換え

「ちゃんと」は、評価であって指示ではない

「ちゃんとやって」を子どもの側から聞くと、こうなります。「今のはちゃんとしていない、と言われた。でも、何が違うのかは言われていない」。つまり、これは評価です。指示ではありません。

指示とは、聞いた人がその場で体を動かせる言葉です。「膝を曲げて」「ボールを見て」「手を前に」。動詞が入っていて、やることが1つに決まる。

試しに、自分の練習でよく使う言葉を10個、書き出してみてください。「ちゃんと」「しっかり」「もっと」「意識して」「気をつけて」「集中」。このうち、聞いた子がその場で体を動かせる言葉がいくつあるか。たいてい、半分も残りません。

体の「外」に目を向ける言葉のほうが、動きは変わる

小さな椅子

運動の学習の研究で、くり返し確かめられていることがあります。自分の体の動かし方に意識を向けさせる指示(「膝を曲げて」「手首を返して」)より、体の外にある結果や目印に意識を向けさせる指示(「あの線まで跳ぶ」「ボールの下をたたく」)のほうが、動きが早く身につき、長く残る、というものです。

これは「外的焦点」と呼ばれ、ジャンプ・投げる・バランス・ゴルフなど、さまざまな動きで同じ結果が出ています。理由は、体の各部位を意識すると、本来は自動で動いているところに手が入って、動きがぎこちなくなるから、と考えられています。

スポーツの現場に置きかえると、こうなります。

  • 「膝を深く曲げて」→「おしりで椅子にすわるように」
  • 「腕を速く振って」→「うしろの壁を肘でたたくように」
  • 「体重を前に」→「鼻をゴールのほうへ出す」
  • 「手首を使って」→「ボールにサインを書くように」
  • 「バランスを取って」→「頭の上のコップをこぼさないように」

全部、子どもの体の外にある「もの」を指しています。小さい子ほど、これがよく効きます。

1回の指示は、動詞1つ

説明が長いコーチの練習で、子どもが動かなくなるのは、指示が多すぎるからです。「膝を曲げて、腕を振って、前を見て、最後まで走って」。4つ言われた子は、最初の1つしか残っていません。

1回の指示は、動詞1つ。直すところが3つあっても、今日はこの1つ、と決めて言います。1つできたら次。順番は、土台になるもの(姿勢、目線)→大きな動き(腕、脚)→細かいところ(手首、指)。

それから、「しない」で終わる指示は使わない。「後ろを見ない」「止まらない」は、何をすればいいかが無い。「前を見る」「走り続ける」と、する形で言います。「ボールを落とさないで」は「ボールを胸でつかまえて」。

見本と、言葉と、確認の3つで1組

床の的と矢印

指示は、言葉だけだと半分しか届きません。

  1. 見本を見せる(横から、ゆっくり、2〜3回。正面だと左右が逆に見える)
  2. 言葉を1つ添える(「おしりで椅子にすわるように」)
  3. やらせて、確認する(「今の、おしりどこまで下りた?」と聞く)

3の確認で、子どもは自分の動きを見ます。これが無いと、言われたことと、自分がやったことがつながりません。

faqよくある質問

低学年には、動きの言葉でも難しくありませんか

むしろ低学年のほうが、ものにたとえる言葉が効きます。「ロケットみたいに」「忍者みたいに」「カエルみたいに」。体の部位の名前より、イメージが先に動きます。高学年には、目印(「あの線まで」「ゴールの右上」)が合います。

動きの言葉で言っても、できない子がいます

その子にとって、指示の単位が大きすぎることが多いです。「おしりで椅子にすわる」ができないなら、実際に椅子を置いてすわらせてから、椅子を外す。言葉で直せないときは、環境を変える(目印を置く、道具を変える、距離を縮める)。言葉だけで何とかしようとしない。

「集中して」と言わないと、ふざけます

ふざけるのは、やることが無いか、やることが分からないときです。「集中して」の代わりに、次にやることを1つ言う。「次はこの線からスタート、3回」。やることが決まると、ふざける隙間が減ります。

summaryまとめ

  • 「ちゃんと」「しっかり」は評価で、指示ではない。聞いた子が体を動かせる言葉が指示
  • 体の部位より、体の外の目印やものに目を向けさせる言葉のほうが、動きは変わりやすい
  • 1回の指示は動詞1つ。「しない」ではなく「する」の形で
  • 見本・言葉・確認の3つで1組。言葉で直せないときは、環境を変える

指示を変えると、子どもが変わる前に、自分が子どもの何を見ているかが変わります。「ちゃんと」と言いたくなった瞬間に、「何が」と自分に聞き返す。それが始まりです。

参考にした資料

  • Wulf, G. (2013). Attentional focus and motor learning: a review of 15 years. International Review of Sport and Exercise Psychology, 6(1), 77–104.

この記事の内容は公開時点のものです。公開されている研究や公的な資料をもとに plax labo 編集部が書いています。体調・ケガ・食事に関わる個別の判断は、医師や専門家にご相談ください。

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