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くやしくて泣く子を前にすると、大人は止めたくなります。泣き声がまわりに響く、時間が押している、ほかの子が見ている。でも、くやしくて泣くのは、本気だった証拠です。どうでもよかった子は泣きません。この記事では、泣いている最中に何をして、何をしないか、そして戻し方を書きます。
- くやしくて泣くのが「弱さ」ではなく、本気だった証拠で、感情の処理の最中であること
- 泣いている最中にやる3つ(待つ・名前をつける・戻る合図)と、言わないほうがいい3つの言葉
- 試合中に泣いたときの交代の判断と、保護者への伝え方
くやしい涙は「弱さ」ではなく、処理の最中
子どもは、強い感情を自分の中で整える力がまだ育っている途中です。くやしさが体の中で処理しきれないとき、涙として外に出る。これは壊れているのではなく、処理が進んでいる状態です。
大人がここで「泣くな」と言うと、処理が止まります。感情はなくなったのではなく、しまい込まれる。しまい込まれたくやしさは、次の練習での投げやりな態度や、「どうせ無理」という言葉になって出てきます。
感情の研究では、子どもの感情を否定せずにまず受け止め、言葉にしてから基準を示す関わり(感情コーチング)が提案されてきました(Gottman ほか, 1996)。大人を対象にした脳画像の研究では、いま感じている感情に言葉で名前をつけると、感情に関わる脳の部位の反応が弱まった、とも報告されています(Lieberman ほか, 2007)。子どもで同じかはそのまま言えませんが、「くやしいね」と名前をつけることが、涙を止めるのではなく落ち着かせる方向に働く、という手がかりです。
泣いている最中にやる3つ

やることは3つだけです。順番も、この順です。
- 待つ。何も言わず、そばにいる。背中に手を置くか、ただ隣に立つ。1分でも2分でもかまいません。ほかの子には「◯◯は少し休んでから戻るから、先に進めよう」とだけ言って、練習を続けます
- 名前をつける。泣き声が少し小さくなったら、「くやしかったね」「本気でやってたもんね」。それ以上は言わない。理由を聞かない。「なんで泣いてるの」は、説明を求める質問で、泣いている子には答えられません
- 戻る合図を決める。「落ち着いたら、手を挙げて」「戻れそうになったら、こっちに来て」。戻るタイミングを本人に渡します。「もういいでしょ、戻って」と大人が決めると、まだ処理が終わっていない子を無理に戻すことになります
この3つのあいだ、慰めも反省も要りません。「次がある」も「大したことない」も、まだ早い。くやしさを否定する言葉は、「本気だったのに」をさらにくやしくさせます。
言わないほうがいい3つの言葉
- 「泣かないの」「泣いても何も変わらない」。本人も分かっています。分かっていて泣いているのです
- 「大したことないよ」「次があるから」。本人にとっては大したことです。大人の目で小さくすると、「分かってくれない」が残ります
- 「みんな見てるよ」。恥を使って止める言い方です。その場は止まっても、「泣く自分は恥ずかしい」が残り、次からは人前で感情を出せなくなります
代わりに使うなら、短い事実です。「くやしいね」「本気だったね」。これだけで十分で、長い言葉は要りません。
試合中・練習中に泣いたとき

試合の途中で泣き出したら、交代させるかどうかを決めなければなりません。目安は「本人が続けたいと言うか」と「体が動いているか」の2つです。
- 泣きながらも走れている、本人が「出る」と言う → 続けさせてよい。泣きながらプレーするのは、悪いことではない
- 足が止まっている、ボールを目で追えていない → いったんベンチへ。「落ち着いたら戻そう」と伝え、戻る前提で下げる
ベンチに下げるときに、「泣いたから交代」という言い方をしない。「少し休んで、戻ろう」。泣いたことを罰にすると、次からは泣くのを我慢してプレーが崩れる子になります。
練習中なら、列から外して少し離れた場所に。ほかの子が寄ってきたら、「大丈夫。先生が見てるから、続けて」と戻します。見物をさせない。
戻ってきたら、何事もなかったように
戻ってきたら、特別扱いをしない。「よく戻ってきたね」も要りません(それも「泣いたこと」を目立たせます)。次の順番に、黙って入れる。練習が終わったあと、ほかの子がいないところで一言だけ、「今日、くやしかったね。それだけ本気だったってことだよ」。
保護者には、迎えのときに短く伝えます。「今日、検定に落ちてくやしくて泣きました。本気でやっていた証拠です。家ではふつうにしてあげてください」。「泣いた」だけを伝えると、保護者は家で「泣いちゃだめでしょ」と言ってしまいます。「本気だった証拠」まで、必ずセットで。
faqよくある質問
毎回泣く子がいて、練習が止まります
練習を止めないことが先です。その子のそばにはコーチが1人つき、ほかの子は進める。毎回泣くなら、泣く場面が「負けるゲーム」に偏っていないか、課題が大きすぎないかを見直す余地があります。
高学年の男子が泣くのを、まわりがからかいます
からかいは、その場で止めます。「本気でやった人が泣くんだ。からかうことじゃない」。これを一度はっきり言っておくと、教室の空気が変わります。
泣いている子に、保護者が駆け寄ってきます
保護者に「少し待ってください。本人が戻る合図を出すまで待ちます」と伝え、そばにいてもらってかまいません。保護者がその場で慰め始めると、処理が止まることがあります。
summaryまとめ
- くやしくて泣くのは本気だった証拠で、感情の処理の最中。止めるものではない
- やるのは3つだけ。待つ → 名前をつける → 戻る合図を決める。理由は聞かない、慰めも反省もまだ早い
- 「泣かないの」「大したことない」「みんな見てる」は使わない。代わりに「くやしいね」の短い事実
- 試合中は「本人が続けたいか」「体が動いているか」で交代を決め、泣いたことを罰にしない
- 保護者には「泣いた」だけでなく「本気だった証拠」までセットで伝える
泣いている子に要るのは、止める言葉ではなく、そばにいる大人です。
参考にした資料
- Gottman, J. M., Katz, L. F., & Hooven, C. (1996). Parental meta-emotion philosophy and the emotional life of families: Theoretical models and preliminary data. Journal of Family Psychology, 10(3), 243–268.
- Lieberman, M. D., Eisenberger, N. I., Crockett, M. J., Tom, S. M., Pfeifer, J. H., & Way, B. M. (2007). Putting feelings into words: Affect labeling disrupts amygdala activity in response to affective stimuli. Psychological Science, 18(5), 421–428.
- Murray, D. W., Rosanbalm, K., Christopoulos, C., & Hamoudi, A. (2015). Self-regulation and toxic stress: Foundations for understanding self-regulation from an applied developmental perspective. OPRE Report #2015-21.
この記事の内容は公開時点のものです。公開されている研究や公的な資料をもとに plax labo 編集部が書いています。体調・ケガ・食事に関わる個別の判断は、医師や専門家にご相談ください。






