目次
一方で、「勝て」としか言わない教室の試合を見ると、子どもたちは勝ちに行きます。でも、負けた日の帰り道には、誰も口を開かない。負けた試合から、何も持ち帰っていない。
勝ち負けは、隠すものでも、すべてでもありません。結果は見せて、過程は言葉にする。この記事では、その考え方を、試合の前・直後・翌週の3つの場面に分けて書きます。
- 「勝ち負けは関係ない」が、子どもに効かない理由
- 試合の前・直後・翌週で分ける、勝ち負けの話し方
- 勝ち続ける子・負け続ける子、それぞれに起きることと対応
「関係ない」が効かない理由
子どもは、勝ち負けを知っています。点数が出て、順位が出て、勝ったほうが喜ぶ。それを「関係ない」と言われると、子どもの中で2つのことが起きます。
- 大人が嘘をついていると感じる。本当は勝ってほしいのに、そう言わないだけだと見抜く
- 本気を出す理由が無くなる。関係ないなら、がんばらなくてよい
勝ち負けを本気で追わない試合は、子どもにとって、ただの練習です。緊張も、くやしさも、乗り越える経験も、そこにはありません。試合の価値は、結果が出ることそのものにあります。だから、結果は隠さない。
ただし、結果だけを見ると、勝った日は「よかった」で終わり、負けた日は「だめだった」で終わります。どちらも、次につながりません。次につなげるのは、過程を言葉にする作業です。
試合の前:「勝ちに行く」と「今日の挑戦」の両方

試合の前に言うのは、2つです。
- 勝ちに行く。「今日は勝ちに行こう」とはっきり言う。言わないと、子どもは本気を出す許可が無いと感じる
- 今日の挑戦を1つ。「勝ち負けとは別に、今日はこれをやってみる」。チームで1つ、できれば1人1つ
この2つを並べて言うことで、「勝ち負けは大事。でも、それだけで試合の価値は決まらない」が、言葉ではなく構造で伝わります。結果と過程の両方に、はじめから目標がある。
試合の直後:結果は本人が知っている。言うのは過程
勝った直後、負けた直後、いちばん言いたくなるのが結果の話です。「勝ったね!」「負けちゃったね」。でも、結果は本人がいちばん知っています。言う必要がない。
直後に言うのは、試合の前に決めた「今日の挑戦」ができたかです。
- 勝った日:「勝ったね。で、今日の挑戦、どうだった?」
- 負けた日:「くやしいね。今日の挑戦は、どうだった?」
負けた日に「くやしいね」と言うのは、大事です。くやしさを否定しない。「気にするな」「次がある」は、くやしさを無かったことにする言葉で、子どもは「くやしがってはいけない」と学びます。くやしさは、次の練習のエネルギーです。そのまま持ち帰らせてよい。
直後に、プレーの反省をしないこと。負けた直後の反省は、子どもには「責められた」としか残りません。反省は、翌週に。
翌週:試合を「材料」にする

試合の次の練習が、本当の振り返りの場です。感情が落ち着いていて、プレーの話ができる。
- 「先週の試合で、うまくいったこと1つ、うまくいかなかったこと1つ」を、全員が言う
- うまくいかなかったことの中から、今週の練習で直すものを1つだけ選ぶ
- 「次の試合の挑戦」を、そこから決める
これで、試合 → 振り返り → 練習 → 次の試合、がつながります。試合は、勝った・負けたで終わるものではなく、次の練習の材料になる。この循環がある教室の子は、負けた試合も「材料が手に入った」と受け取れるようになります。
勝ち続ける子に起きること
強い子、強いチームには、別の問題があります。勝つことが当たり前になり、勝てなくなったときに崩れる。小学生で勝ち続けた子が、中学で勝てなくなり、やめる。よくある話です。
対応は2つ。
- 勝った試合でも、過程を聞く。上に書いたとおり。「何が良かった?」が答えられない子は、勝ち方を知らずに勝っている
- ときどき、勝てない相手と試合をする。負ける経験を、小学生のうちにさせておく。負けたときの振り返りを、勝てるうちに練習しておく
負け続ける子に起きること
逆に、負け続けている子は、「試合=嫌なもの」になります。本気を出さなくなり、「本気じゃなかったから負けた」と自分を守る。
対応は、勝ち負け以外の結果を作ることです。
- 「今日の挑戦」を、必ず達成できるものにする。「声を出す」「最後まで走る」
- 試合の中の「小さな勝ち」を数える。「1回ボールを奪えた」「1本シュートを打てた」
- 負けた試合でも、挑戦ができた日は、できた日として扱う
勝てない時期に「挑戦はできた」を積み重ねた子は、勝てるようになったときに崩れません。
faqよくある質問
保護者が、勝ち負けだけを気にします
保護者も「勝った?」以外の聞き方を知らないだけです。試合の前に、「今日のチームの挑戦は◯◯です。帰りに『◯◯できた?』と聞いてください」と伝えると、家での会話が変わります。試合の応援の話は、別の記事(試合の応援で、やってはいけない3つ)に書きました。
低学年の試合で、点数をつけるべきですか
つけてよいと思います。点数が無い試合は、子どもにとって試合ではありません。ただ、順位表を貼り出す・表彰する、まではしなくてよい。点数は出る、でも引きずらない。その日のうちに次の話をする。
負けて泣いている子に、何と言えばいいですか
「くやしいね」だけでよい。泣いている最中に、慰めも反省も要りません。泣き終わるまで、そばにいる。くやしくて泣く子への対応は、別の記事に詳しく書きます。
summaryまとめ
- 「勝ち負けは関係ない」は、子どもに嘘に聞こえ、本気を出す理由を消す。結果は隠さない
- 試合の前は「勝ちに行く」と「今日の挑戦」の両方。直後は結果でなく挑戦の話。反省は翌週
- 勝った日ほど、過程を聞く。勝ち方を知らずに勝っている子は、勝てなくなったときに崩れる
- 負け続ける子には、勝ち負け以外の結果(挑戦・小さな勝ち)を作る
勝ち負けは見せる。過程は言葉にする。その両方があって、試合は子どもを育てます。
この記事の内容は公開時点のものです。公開されている研究や公的な資料をもとに plax labo 編集部が書いています。体調・ケガ・食事に関わる個別の判断は、医師や専門家にご相談ください。






