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coaching

練習中にイライラしている子への対処。止める前に「名前をつける」、そのあと「選ばせる」

ドリブルが3回続けて失敗した。その子はボールを足で蹴り飛ばし、コーンを倒して、しゃがみ込みました。横の子が「やめなよ」と言うと、さらに大きな声を出す。コーチが「落ち着いて」と言っても、聞こえていないように見えます。

  • 対象指導者
  • 読む目安約7分
  • 区分読みもの・指導・声かけ

公開 2026.11.01 / plax labo 編集部

目次

多くのコーチがやってしまうのは、その場で止めて、その場で言い聞かせることです。でも、イライラの最中の子には、言葉がほとんど入りません。入らないのに言い続けると、子どもは「責められた」だけを持ち帰ります。この記事では、止める前にすることから順に書きます。先に要るのは、距離・名前・選択の3つです。

point
  • イライラは「わざと」ではなく、感情の調整がまだ途中で起きていること
  • 引き金を4つに分けて見分ける方法と、その場の3手順(距離・名前・選択)
  • 言ってはいけない3つと、落ち着いたあとに練習へ戻す合図

イライラは「わざと」ではない

子どもが物に当たったりふてくされたりすると、大人は「態度が悪い」と見ます。でも、小学生の年ごろの子は、自分の感情を自分で整える力が、まだ育っている途中です。大人なら「くやしいけど、次」と切り替えられるところを、子どもは切り替えの道具をまだ持っていません。

発達の研究では、子どもの自己調整は、まわりの大人が外から一緒に整えること(共同調整・co-regulation)を通して育つ、と説明されます(Murray ほか, 2015)。つまり、イライラしている子の横で大人がどうふるまうかが、そのまま「感情の整え方の見本」になります。大人が大声で止めれば、「イライラは大声で止めるもの」と学びます。

もう1つ。大人を対象にした脳画像の研究で、いま感じている感情に言葉で名前をつけると、感情に関わる脳の部位(扁桃体)の反応が弱まった、と報告されています(Lieberman ほか, 2007)。子どもで同じかは、そのまま言えません。でも、「くやしいんだね」と名前をつける関わりが、感情を押さえつけずに落ち着かせる方向に働く、という手がかりにはなります。

引き金は4つ。「できない・負けた・待たされた・体の都合」

こぼれたボール

イライラしている子を見たら、止める前に、何がきっかけだったかを1つ選んでください。たいてい、次の4つのどれかです。

  1. できない。何度やっても失敗する。まわりはできている
  2. 負けた。ゲームや競争で負けた。判定に納得していない
  3. 待たされた。列が長い。自分の番が来ない。順番を抜かされた
  4. 体の都合。空腹・寝不足・暑さ・寒さ・体調。練習の内容と関係ない

同じ「ボールを蹴る」でも、引き金が違えば、あとの対応が変わります。①なら課題の大きさ、②なら勝ち負けの扱い、③なら練習の組み立て、④ならその日は休ませる。引き金を見ずに「態度」だけを直そうとすると、次の練習でまた同じことが起きます。

とくに④は見落とされます。おやつを食べずに来た子・前の晩に遅くまで起きていた子は、ふだんよりずっと短い導火線で爆発します。練習の内容を直しても意味がない日です。

その場の3手順:距離 → 名前 → 選択

イライラの最中の子に、その場でやることは3つだけです。

  • 距離。まず、その子をまわりから少し離します。「こっちで1回休もう」。みんなの前にいるかぎり、引っ込みがつきません。離すのは罰ではないので、怒った顔で連れて行かない
  • 名前。離れたところで、感情に名前をつけます。「3回うまくいかなくて、くやしかったんだね」。外れていてよく、違えば子どもが直します。「違う、◯◯が抜かした」と言えたら、それだけで一段落ち着いています
  • 選択。落ち着いてきたら、戻り方を選ばせます。「もう1回やる? 次の回から入る?」。「戻りなさい」と命じると、また火がつきます

この3つのあいだ、説教はしません。ボールを蹴ったこと・コーンを倒したことへの話は、落ち着いたあと、短く1回だけです。「ボールは蹴らない。次からは、くやしくなったら先生のところに来て」。約束を1つ作って、終わり。

言ってはいけない3つ

いが栗

イライラの最中に言いたくなる言葉で、逆効果になるものが3つあります。

  • 「落ち着いて」「泣かない」。落ち着けないから困っています。「そうするべきだ」と言われると、できていない自分をもう1つ突きつけられる
  • 「みんな見てるよ」。まわりの目で止める言い方です。その場は止まっても「イライラした自分は恥ずかしい」が残り、次からは隠します。隠した子は、あとで別の形で爆発します
  • 「なんでそんなことするの」。問い詰めです。答えられる子はいません。答えられないと大人はさらに問い、子どもはさらに黙る

代わりに使うのは、短い、こちらの観察です。「3回続けて外れたね」「順番、長かったね」。評価も問いも入っていない言葉は、火に油を注ぎません。

落ち着いたあとに。戻る合図と、次への持ち越し方

戻るときは、何事もなかったように迎えます。戻った瞬間に「さっきのことだけど」とやり直すと、戻ってきた勇気がしぼみます。

ただし、コーチの側は持ち越します。①できない なら次の練習で課題を1段やさしく、②負けた ならゲームの前に「負けたときにどうするか」をチームで1つ決めておく、③待たされた なら列を短くする(待ち時間ゼロの練習の記事を見てください)、④体の都合 なら保護者に「練習の前に何か食べましたか」と責めない形で聞く。

イライラが週に何度も続く・物や人に向かう・高学年でも毎回長く引きずる、というときは、コーチだけで抱えず保護者と話し、必要なら専門の相談先につなぐほうがよいこともあります。「性格」で片づけないでください。

faqよくある質問

ほかの子の安全があるので、すぐ止めたいのですが

止めてください。物や人に向かうときは、まず体を止めます。ただし、止めたあとの手順は同じです。「止める」と「言い聞かせる」を同時にやらないことが大事です。

名前をつけても「違う!」と怒ります

それでよいのです。「違う」と言えた時点で、言葉が出ています。「じゃあ、何がいやだった?」ではなく、「そっか、違うんだね」と受けて、少し待つ。自分で言い始める子が多いです。

保護者に、どう伝えればいいですか

「今日、◯◯でイライラして、少し休んでから戻りました」と、事実だけを短く。「態度が悪い」は言わない。練習前の食事や睡眠を責めずに聞くと、④の引き金が見つかることがあります。

summaryまとめ

  • イライラは「わざと」ではなく、感情を整える力が育つ途中で起きる。大人のふるまいが、その見本になる
  • 止める前に、引き金を4つ(できない・負けた・待たされた・体の都合)から1つ選ぶ
  • その場でやるのは 距離 → 名前 → 選択 の3つだけ。説教は落ち着いたあとに、短く1回
  • 「落ち着いて」「みんな見てるよ」「なんで」は使わない。代わりに、こちらの観察を短く
  • 戻ってきたら何事もなかったように迎え、引き金への手当てはコーチが次の練習へ持ち越す

イライラしている子に要るのは、強い言葉ではなく、横で一緒に整えてくれる大人です。

参考にした資料

  • Murray, D. W., Rosanbalm, K., Christopoulos, C., & Hamoudi, A. (2015). Self-regulation and toxic stress: Foundations for understanding self-regulation from an applied developmental perspective. OPRE Report #2015-21. Office of Planning, Research and Evaluation, U.S. Department of Health and Human Services.
  • Lieberman, M. D., Eisenberger, N. I., Crockett, M. J., Tom, S. M., Pfeifer, J. H., & Way, B. M. (2007). Putting feelings into words: Affect labeling disrupts amygdala activity in response to affective stimuli. Psychological Science, 18(5), 421–428.
  • Gottman, J. M., Katz, L. F., & Hooven, C. (1996). Parental meta-emotion philosophy and the emotional life of families: Theoretical models and preliminary data. Journal of Family Psychology, 10(3), 243–268.

この記事の内容は公開時点のものです。公開されている研究や公的な資料をもとに plax labo 編集部が書いています。体調・ケガ・食事に関わる個別の判断は、医師や専門家にご相談ください。

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