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この場面で、多くのコーチがやるのは「どっちが先?」と「謝りなさい」です。どちらも、気持ちは分かります。でも、けんかの直後に謝らせても、残るのは「言わされた」だけで、次の週に同じことが起きます。この記事では、その場の5つの順番と、やってはいけない3つ、保護者への伝え方を書きます。
- けんかの直後に「謝りなさい」が逆効果になる理由
- その場の5つの順番(止める・分ける・別々に聞く・事実を並べる・戻す)
- やってはいけない3つと、両方の保護者への伝え方
けんかの直後に、話し合いはできない
けんかの直後、子どもの体の中では、怒りと恐れが同時に動いています。この状態の子に「何があったの」と聞いても、出てくるのは事実ではなく、自分を守る言葉です。「向こうが先」「ぼくはやってない」。嘘をついているのではなく、まだ落ち着いていないから、事実を並べられない。
感情を否定せず、まず受け止めてから基準を示す関わり(感情コーチング・Gottman ほか, 1996)が、ここでも土台になります。順番は、感情が先、事実はあと、基準は最後。この順番を守らないと、何を言っても入りません。イライラしている子・くやしくて泣く子への対応は、別の記事に書きました。けんかは、その2人が同時に目の前にいる場面です。
その場の5つの順番

- 止める。体が触れているなら、まず離す。大声は要りません。間に入って、「ストップ」。安全が先です
- 分ける。2人を、見えない距離に離します。泣いている子はベンチへ、もう1人は別の場所へ。まわりの子には「続けて」。見物をさせない。アシスタントがいれば1人ずつ付く
- 別々に聞く。落ち着いてから、1人ずつ。聞き方は「何があった?」ではなく、「最初に何が起きた? 次は?」と、時間の順に。評価の言葉を挟まない。「それはだめでしょ」は、聞き終わってから
- 事実を並べる。2人の話を、コーチが時間の順に並べ直して、2人の前で言います。「ボールを取りに行って、ぶつかった。◯◯が蹴って、△△が押した。△△が転んで泣いた」。誰が悪いかは言わない。起きたことだけ
- 戻す。「ボールの取り合いで押すのは、なし。これは2人ともに言う。じゃあ、戻ろう」。謝らせない。戻ったら、2人を別の組にする
5つ合わせて5分ほどです。練習の残り時間を全部使う必要はありません。
「謝りなさい」を言わない理由
謝らせると、その場は収まります。でも、本人が納得していない謝罪は、「大人の前では謝る」を学ばせるだけです。次からは、見えないところでやります。
謝りたくなった子は、自分で謝ります。事実を並べて、基準を言って、戻したあと、自分から「ごめん」と言う子は多い。言わなくても、次の練習で普通に一緒にプレーしていれば、それで仲直りです。子どものけんかは、大人が思うより早く終わります。大人が「ちゃんと仲直りしなさい」と間に入ると、かえって長引きます。
やってはいけない3つ

- 「どっちが先?」。先を決めても、何も解決しません。先に手を出したほうが「悪い」となり、もう片方は「自分は正しい」を持ち帰る。けんかはたいてい両方に原因があります
- みんなの前で裁く。集まってきた子の前で「◯◯が悪い」と言うと、その子はクラスの中で立場を失います。翌週から来なくなる子もいます
- 泣いている子だけの味方をする。泣いている子が被害者とは限りません。先に蹴ったのが泣いている子、ということはよくあります。泣いているほうに寄り添い、押したほうを責める、を無意識にやらないこと
代わりに持つのは、「2人とも、うちの教室の子」という立ち位置です。どちらの味方でもなく、どちらも預かっている。
保護者への伝え方
迎えのときに、両方の保護者に、同じ事実を伝えます。「今日、ボールの取り合いで◯◯くんと△△くんがぶつかって、押す・転ぶがありました。2人を別々に落ち着かせて、話を聞いて、押すのはなしと伝えて、練習に戻しました。ケガはありません」。
伝えないと、子どもの話だけが家に届きます。子どもの話は、自分に都合のよい形になっています。片方の保護者だけに伝えると、「うちの子だけ悪者にされた」になります。両方に、同じ言葉で。
保護者から「相手の子は謝ったんですか」と聞かれたら、「謝らせていません。事実を2人の前で並べて、基準を伝えました。子ども同士は次の練習で普通に戻ることがほとんどです」と、方針として答えてください。方針が無いと、保護者ごとに答えが変わります。
faqよくある質問
片方が明らかに悪いときも、裁かないのですか
事実を並べれば、どちらが何をしたかは2人とも分かります。「押したのは△△。押すのはなし」と、行動と基準は言う。「△△が悪い」と人を裁く言い方をしない、という違いです。
同じ2人が毎週けんかします
組み合わせを変えてください。同じ組・隣の列に置かない。相性の悪い2人を「仲良くさせる」のは、教室の仕事ではありません。別々にしておけば、けんかは減ります。
保護者同士がもめ始めました
教室が間に入って、両方に同じ事実を伝え直してください。保護者同士で直接やり取りさせない。「教室で起きたことは教室が預かります」と、はっきり言ってよい場面です。
summaryまとめ
- けんかの直後に話し合いはできない。感情が先、事実はあと、基準は最後
- その場は 止める → 分ける → 別々に聞く → 事実を並べる → 戻す の5つ、5分で
- 謝らせない。納得していない謝罪は「大人の前では謝る」を教えるだけ
- 「どっちが先?」「みんなの前で裁く」「泣いている子だけの味方」をしない
- 保護者には 両方に、同じ事実を。方針を言葉で持っておく
けんかは、悪い子を見つける場面ではなく、2人とも預かっていることを示す場面です。
参考にした資料
- Gottman, J. M., Katz, L. F., & Hooven, C. (1996). Parental meta-emotion philosophy and the emotional life of families: Theoretical models and preliminary data. Journal of Family Psychology, 10(3), 243–268.
- 文部科学省(2022)「生徒指導提要(改訂版)」(児童生徒間のトラブルへの対応の考え方)
- Murray, D. W., Rosanbalm, K., Christopoulos, C., & Hamoudi, A. (2015). Self-regulation and toxic stress: Foundations for understanding self-regulation from an applied developmental perspective. OPRE Report #2015-21.
この記事の内容は公開時点のものです。公開されている研究や公的な資料をもとに plax labo 編集部が書いています。体調・ケガ・食事に関わる個別の判断は、医師や専門家にご相談ください。







