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どれも自然に出る言葉で、もちろん悪くありません。でも、ほめ言葉がこの2つだけの練習では、子どもはだんだん「失敗したら、すごくない自分になる」と感じ始めます。練習でむずかしいことに手を出さなくなるのは、そのサインです。
この記事では、心理学の有名な実験を手がかりに、子どもが自分で動き出す声かけを3つにまとめました。どれも明日の練習で、そのまま口に出せるものです。
- 「才能」をほめると、なぜ子どもが失敗を避けるようになるのか
- 練習でそのまま使える3つの声かけと、具体的な言い換え
- 叱るときに守る3つのルール
「頭がいいね」とほめられた子は、やさしい問題を選んだ
1998年、心理学者のキャロル・ドゥエックらは、小学5年生に図形のパズルを解かせ、終わったあとに2種類のほめ方をしました。
- 片方の子たちには「頭がいいね」(才能をほめる)
- もう片方には「がんばったね」(取り組みをほめる)
そのあと、次に解く問題を選ばせます。「頭がいいね」と言われた子の多くは、たしかに解ける、やさしい問題を選びました。「がんばったね」と言われた子の多くは、むずかしくても学べる問題を選びました。
さらに、わざとむずかしい問題でつまずかせたあと、才能をほめられた子は楽しさも粘りも下がり、自分の点数を友だちに伝えるときに実際より高く言う子までいました。
才能をほめると、子どもは「評価されているのは自分の才能だ」と受け取ります。すると失敗は「才能がない証拠」になるので、避けるしかなくなる。取り組みをほめられた子は、失敗を「まだやり方が足りない」と受け取るので、もう一度手を出せます。
スポーツの「すごいね」「上手だね」「センスあるね」は、ほとんどが才能側のほめ言葉です。
声かけ①「何がよかったか」を言う
結果ではなく、その直前の動きを言葉にします。
- 「ナイスシュート!」→「シュートの前に、ゴールを一回見たね。だから入った」
- 「上手!」→「手を離すのが早くなった。だから回れたんだよ」
- 「いいパス」→「相手が走る先に出したね」
これには2つの効果があります。子どもは「次も同じことをすればいい」と分かる。そして、コーチが自分をちゃんと見ている、と伝わる。「すごい」は見ていなくても言えますが、「ゴールを一回見たね」は見ていないと言えません。
声かけ②「試したこと」をほめる
できたかどうかに関わらず、選んだこと・変えたことに目を向けます。
- 「今は入らなかったけど、今までと違う足で蹴ったのがいい」
- 「失敗したけど、一番前のレーンを選んだのはえらい」
- 「さっきより高くジャンプしようとしたのが分かったよ」
失敗したときに何も言われない練習では、子どもは「失敗=何もない」と学びます。失敗したときに試したことを拾ってもらえる練習では、「失敗しても試す価値がある」と学びます。むずかしいことに手を出す子は、ここで育ちます。
ただし、取り組みをほめるのは「がんばったね」を連発することではありません。「がんばった」も、何をがんばったかが無いと、すぐ空っぽな言葉になります。「何を」まで言うのが、①と②の共通点です。
声かけ③ 問いで返す
評価をコーチが握らず、子どもに渡します。
- 「今のどうだった?」
- 「次はどこを変える?」
- 「10点満点でいうと、いくつ? あと何があれば11点?」
最初は「わからない」「ふつう」としか返ってきません。それで大丈夫です。問われ続けた子は、やがて動きながら自分を見るようになります。これはコーチがいない場所でも練習できる子になる、ということです。
答えが出ないときは、2択にします。「足と腕、どっちが気になった?」。これなら答えられます。
やってはいけない3つ
- 比べる(「◯◯くんより上手」「お兄ちゃんはできたよ」)… 比べられた子は、相手が失敗することを願うようになります
- 結果だけ(「勝てたね」「入ったね」)… 結果は本人に見えています。言う必要があるのは、結果の前にあったことです
- 才能(「センスある」「天才」)… 上の実験のとおり。本人はうれしくても、失敗が怖くなります
叱るときの3つのルール
ほめる話をしてきましたが、叱ることをやめる必要はありません。危ないこと、人を傷つけることは、その場で止めます。守るのは3つだけです。
- 短く。長い説教の中身は、子どもには残りません。残るのは「長く怒られた」だけです
- 行動を言う。「ちゃんとやって」は、何をすればいいか分かりません。「ボールを拾って、列に戻る」と言います
- その場で、人格に触れない。「だからお前はだめなんだ」は、行動ではなく人を否定しています。次の練習に持ち越さず、その場で終える
faqよくある質問
ほめると調子に乗って、ふざける子がいます
ほめ言葉が「すごい」「上手」のとき、子どもは「もう十分」と受け取ります。「今のは手を離すのが早かった。じゃあ次は、着地までまっすぐ」のように、次の課題と一緒に言うと、調子に乗る前に次へ進みます。
ほめるところが見つからない子がいます
結果ではなく、行動を探してください。「列にまっすぐ並んだ」「友だちのボールを拾った」「最後まで声を出した」。どれも、見ていれば必ずあります。見つからないのは、その子を見ていないときです。
保護者が結果ばかり聞きます
保護者も「すごいね」しか言葉を持っていないだけのことが多いです。練習の帯で、「今日はシュートの前にゴールを見る練習をしました。家で聞くなら『ゴール見た?』と聞いてください」と、その日の問いをひとつ渡すと、家での会話が変わります。
summaryまとめ
- 「すごい」「上手」は才能をほめる言葉。続けると、子どもは失敗を避けるようになる
- 何がよかったかを言う・試したことをほめる・問いで返す。この3つが、子どもが自分で動き出す声かけ
- 叱るときは、短く・行動を・その場で
子どもは、コーチが何を見ているかを、コーチの言葉から学びます。「ゴールを一回見たね」と言われ続けた子は、ゴールを見るようになります。
参考にした資料
- Mueller, C. M., & Dweck, C. S. (1998). Praise for intelligence can undermine children's motivation and performance. Journal of Personality and Social Psychology, 75(1), 33–52.
- キャロル・S・ドゥエック『マインドセット「やればできる!」の研究』(草思社、2016年)
この記事の内容は公開時点のものです。公開されている研究や公的な資料をもとに plax labo 編集部が書いています。体調・ケガ・食事に関わる個別の判断は、医師や専門家にご相談ください。







